JAK阻害剤がCovid−19重症患者に有効

   Podcastでいろいろな論文の要旨を聞くことができます。自身のリスニング力向上のためと、最新の知識を得るために、NEJM、JAMAなどを聞きます。このブログではその内容を一部備忘録的に取り上げていきたいと思います。

最近はやはりCovid-19の話題が多いです。

Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19 Andre C Kalil et al.N Engl J Med. 2021 Mar 4;384(9):795-807.

   Baricitinib(バリシチニブ)はJAK阻害剤です。これは、炎症性サイトカインの刺激伝達経路を細胞内において阻害する薬剤です。日本国内では、リウマチに対して適応があります。Covid−19の重症化には炎症系の暴走が関与していると考えられており、これまでにもIL-6阻害剤がコロナに有効で、アクテムラ(トシリズマブ)がイギリスでCovid-19治療薬として承認されたとか、日本でも治験中だとかという話がありますが、JAKはその下流にあると考えて良いと思います。疾患によって異なるでしょうが、より下流で選択的にブロックした方が全身における副作用などは少ない印象がありますし(例:ACE阻害薬 vs ARB。ACE阻害薬の方が空咳などの副作用がある)、治療の選択肢が増えるのは良いことです。

   この試験は二重盲検ランダム化比較試験で、1033人の入院患者においてバリシチニブ+レムデシビルと、プラセボ+レムデシビルを比較しています。バリシチニブ群が中央値7日で回復した一方、プラセボ群は8日でした。たった1日ではありますが、統計学的有意な改善が見られたようです。臨床症状は15日目の時点ではバリシチニブ群の方でオッズ比で30%改善が見られました。
   Ordinal Scoreごとにサブ解析をしています。Ordinal Score 4 (酸素なし)5(入院、酸素マスクが必要なレベル)の患者では両群で大きな差は見られませんでしたが、 6(高流量酸素や非侵襲的換気)の患者では、バリシチニブ群が中央値10日で回復した一方、プラセボ群では18日と有意に改善が見られました。7(侵襲的換気、ECMO)では大きな改善は見られませんでした。
   WHOのOrdinal Scaleの表と論文内のScoreが若干ずれているようですが、ググってみたらこの論文のScaleもあるみたいですね。論文ごとにScaleが違う可能性があるので、都度確認が必要です。
   死亡率も、バリシチニブ群で5.5%、プラセボ群で7.8%と改善の傾向が見られました(統計学的な有意差はなし)。

   JAK阻害剤であるバリシチニブを追加しているため、副作用が懸念されましたが、副作用はバリシチニブ群で16%、プラセボ群で21%であり、新規感染症はバリシチニブ群で5.9%、プラセボ群で11.2%とむしろバリシチニブ群のほうが有意に低いという結果が見られました。
   著者たちはデキサメサゾンとの比較に興味を持っているようですが、個人的にはやはりIL-6阻害薬と勝負してほしい気はします。